新潟大学 工学部情報工学科/大学院自然科学研究科電気情報工学専攻情報工学コース

研究テーマ紹介

各教員の研究を紹介します.

リモートセンシング・電波応用
山口芳雄,山田寛喜,西森健太郎
リモートセンシング・電波応用山口芳雄,山田寛喜,西森健太郎
  • 山口芳雄 教授
    レーダリモートセンシングの研究 ─大切な地球の未来のために─
  • 山田寛喜 教授
    無線通信・センシングにおける高度情報処理に関する研究
     ─知的な通信・センシングを目指して─
  • 西森健太郎 准教授
    MIMO伝送を利用した空間信号処理に関する研究

 


レーダリモートセンシングの研究
─大切な地球の未来のために─

教授 山口 芳雄

 私達の研究室では,レーダを使った地球観測の研究を行っています.人工衛星によるレーダ観測は,昼夜を問わず,天候に関わらず,広い領域を瞬時に観測できる利点があります.その中でも電波の偏波情報を利用する技術は世界をリードしており,JAXA (日本), NiCT(日本), NASA (米国), DLR (ドイツ), CSA-ASC (カナダ)など連携してリモートセンシングの研究に取り組んでいます.
 下図は新潟県の偏波レーダ画像例です。電波の表面散乱を青色,2回反射を赤色,体積散乱電力を緑色に割り当てて合成したものです。青色から赤色に変わっている箇所は稲の生長と大きく関連しています.
6月 8月
日本の「だいち」による新潟県の偏波レーダ画像 (C) METI, JAXA, Niigata Univ.

 


無線通信・センシングにおける高度情報処理に関する研究
─知的な通信・センシングを目指して─

教授 山田 寛喜

 携帯電話や無線LAN,非接触ICカードなど,電波を利用した無線システムは人間生活をより便利にしてきました.無線システムでは,雑音や他のシステムからの干渉を受けた受信信号から,いかに必要な信号を取り出すかが性能を決める鍵となります.無線信号には自然界の法則の影響を受けた様々な『情報』が含まれています. その『情報』をどのように活用するかが次世代の無線通信・センシングの鍵となります.人間の耳は雑踏の中でも,特定の人の会話を聞き分けることができます.またコウモリは,超音波を発して獲物を識別し捕らえています.現在の無線機器はまだその域には達していません.
 このような『知的』な通信・センシングを利用するには単なる信号処理を超えた高度な情報処理が必要となります.例えば,ユーザの要求に応じて様々な通信に対応する無線端末や人間などの物体識別能力を持ったレーダが実現されれば,我々の生活はより快適で安全になるでしょう.研究室では,アレーアンテナを利用した,そのような知的な通信・センシングの実現に向けて総合的に取り組んでいます.

様々な無線システムの実験・評価を行う電波暗室

 


MIMO伝送を利用した空間信号処理に関する研究

准教授 西森 健太郎

キーワード: MIMO,Massive MIMO,無線LAN,伝搬測定,干渉除去,通信効率

 西森研究室では,multiple-input multiple output(MIMO)伝送を利用した空間信号処理に関する研究を行っています.最新の無線LANや携帯電話に導入されており,無線区間における通信速度を格段に向上させるMIMO技術を様々な分野に応用する研究を行っています.図に示す技術は,MIMOの伝搬の変動を人の侵入や行動検出に用いるための研究を行っています.これをMIMOセンサと呼んでいます.また,次世代移動通信システムにおいて究極に通信効率を高めることが可能なマルチビームMassive MIMO伝送の研究等を行っています.

電波センサの概念
ソフトウェア系
青戸等人,元木達也,高橋俊彦,萩原威志
ソフトウェア系青戸等人,元木達也,高橋俊彦,萩原威志

 


書き換えシステムによる計算と証明

教授 青戸 等人

キーワード: 計算モデル,等式論理,定理自動証明,ソフトウェア検証

 等式による変形は推論方法の1つとして広く用いられています.等式推論は,人にとって直観的に把握しやすい推論方法であるばかりでなく,場合によっては,計算によって効率的に推論を実現することが可能です. 等式を方向付けした規則(等式理論での公理を向き付けしたもの)を集めたものを書き換えシステムとよびます.書き換えシステムは,推論と計算という2つの側面をもつので,推論と計算を組み合わせた柔軟な操作に適しています.等式変形や書き換えという(一見)素朴な記号処理が,さまざまなソフトウェア検証や自動推論などにおけるいろいろな面での基礎付けとなり得ると考えており,書き換えシステムにもとづく定理自動証明や検証技術を研究しています.等式は一見単純そうに思えますが,等式の左辺や右辺に表現力豊かな対象を用いたり,あるいは条件付きの等式変形を考えたりなど,実は非常に柔軟な表現力があり,この領域にはソフトウェア技術としても計算機科学としても幅広い問題の裾野があります.

 


進化的計算に関する研究

准教授 元木 達也

 自然界では環境に適応した生物種が繁栄し,環境に適応できない生物種は死滅します.この様な進化の過程等をお手本にして,手さぐりで解を探索する手法に関する研究です.ここでは,探し出したい解の候補を生物個体,解の満たすべき条件を環境と見なします.探し出したい解がプログラムで,解の満たすべき条件がプログラムの振舞いとして与えられている場合は,指定された振舞いをするプログラムを手さぐりで試行錯誤的に探すということになります.「手さぐりで探す」と言っても,そのやり方によって探索の効率が左右されるので,探索を効率的に進ませるためにどの様に手さぐりすべきかの知見が重要になってきます.

 


列挙アルゴリズムの研究
―表現法から列挙アルゴリズムへ―

准教授 高橋 俊彦

キーワード: 組合せアルゴリズム,組合せ論,グラフアルゴリズム,グラフ理論,列挙アルゴリズム

 列挙とはある条件を満たす対象を漏れも重複もなくすべて与えることです.例えば, 「1,2,3の3つの数字を並べてできる3桁の数」の列挙とは,123,132,213,231,312,321という数のリストを作ることです.列挙アルゴリズムとはコンピュータによって列挙を行う手法です.近年のハードウェア(コンピュータ)の発展は目ざましいものがありますが,対象が非常に多くなるとコンピュータを使っても列挙は困難になります.そのため,アルゴリズムを上手に工夫する必要に迫られているのです.
 これまで我々の研究室では条件を満たす対象をコンピュータの内部でどのように表現すれば効率的な処理ができるかを研究してきました.このノウハウが列挙アルゴリズムに生かせるのではないかと考え,数年前から列挙アルゴリズムの研究に軸足を移しています.

 


属性文法モデルの応用からウェブ,仮想化環境の応用など

助教 萩原 威志

キーワード: ウェブシステム,ウェブアノテーション,P2Pサービス,属性文法,仮想OS,仮想ネットワーク,仮想化環境

 下記のような研究を幅広く行っています.
  * 属性文法の応用
   - ツリー,あるいは階層モデル化に基づくソフトウェア開発やメンテナンスの効率化
   - 状態永続化とインクリメンタル計算に基づく属性文法処理系の構築
  * ウェブベースシステム
   - ウェブアノテーションサーバーの実装とその応用(P2P通信によるサーバー組織化と応答性能の確保)
  * 計算機演習システム構築
   - 特定領域の計算機演習環境をすばやく用意できるように
メディア系
林貴宏,榎本洸一郎
メディア系林貴宏,榎本洸一郎

 


多様化する表現形態に対応した類似商標検索システムの研究

准教授 林 貴宏

 私たちは,普段商品を購入するときに,企業のマークや商品の名前など「商標」を一つの目印として選びます.グローバル化が進む社会において,商標保護の重要性はますます高まっています.最近では,文字や図形に加えて,動き,音,色彩の組み合わせなども商標の対象となりました.商標登録数が増大し,多種多様な商標に対する審査を人間の手だけで行うことは限界があり,コンピュータによる支援が不可欠です.
 当研究室では,類似商標検索システムの研究開発に取り組んでいます.商標の多様化する表現形態に対応するために,特に,映像処理,画像処理,音信号処理をはじめとするマルチメディア情報処理技術,巨大データベースに対する高速検索技術の研究に力を入れて取り組んでいます.

類似商標図形検索システムの開発

類似商標検索システムによる商標審査支援

 


海洋環境における生態理解のための画像処理技術

助教 榎本 洸一郎

キーワード: 画像処理,画像認識,画像計測,海中,海底,海洋,水産資源量調査,漁業,空撮,ドローン,農業,干潟,生物行動学

 デジタルカメラやDVカメラなどの普及により,様々な分野でデジタル画像の応用が試みられている.従来までの調査手法と比較して広域化・高精度化が期待できる.一方で,水産業で対象となる環境は陸上ではなく海中などであるため,画像データの取得や画像処理による計測には多くの問題があり,計測技術の確立が求められている.ここでは水産業(漁業)への応用例として,北海道のホタテガイ地撒き養殖のための自動計測システムについて紹介する.
 北海道オホーツク海で行われているホタテガイ地撒き養殖では,生育状況の把握や資源量管理のために海底画像を用いた資源量調査が行われている.しかし,これらの画像を用いた自動計測技術が確立されておらず,画像中の対象資源を専門家が目視にて計測しているため,計測時間が長期化し,調査の広域化への大きな妨げとなっている.この問題に対して,海底画像から画像処理を用いたホタテガイの自動計測技術を確立することで解決を試みている.
 海底画像において,ホタテガイは底質によって視覚的特徴が大きく異なる.例えば底質の固い礫場では礫の上におり殻の模様なども確認できるが,砂場では砂に潜り隠れており,殻の縁(殻縁)のみしか確認できない.このため,底質に応じて最適なホタテガイの検出手法を選択する自動計測システムを提案している(図).まず,海底画像から底質が礫場か砂場かを識別する.次に底質に適したホタテガイ検出アルゴリズムを用いて検出・計測する.計測した結果と海底画像撮影時に記録されたGPS情報を統合することで,対象海域のホタテガイ被度マップを作成することができる.

図 海底画像を利用したホタテガイ自動計測システム
情報システム
牧野秀夫,山﨑達也,阿部貴志
情報システム牧野秀夫,山﨑達也,阿部貴志
  • 牧野秀夫 教授
    保健・医療・環境分野をネットワークで結ぶ研究室 ─福祉機器を起点とした商品開発─
  • 山﨑達也 教授
    スマートライフを目指して ─スマホアプリ使い勝手のユーザ実感可視化を一例として─
  • 阿部貴志 准教授
    バイオインフォマティクス(生命情報学)研究室
     ―情報学的アプローチによるゲノム資源の活用―

 


保健・医療・環境分野をネットワークで結ぶ研究室
─福祉機器を起点とした商品開発─

教授 牧野 秀夫

 大学の情報工学科では,単にプログラムを作成するのではなく,建築家のように新しい知能情報システムを企画・設計することを学びます.ここで「ものづくりの段取り」を理解していけば,応用分野は無限に広がるわけです.現代は携帯電話や自動車もソフトウェア制御なしには動きませんし,将来は100円コンピュータも出現するかもしれません.そうなった時は,そこでどのような情報(コンテンツ)を提供するかが重要です.「情報工学=人間との係わり」と考えると医学系や文系の方との相互交流もますます必要です.
 研究では,可視光通信という分野で視覚障がい者用案内装置や旧山古志村で防災照明ネットワークの研究を企業と共同で進めています.また,防災用魚眼カメラ空撮画像展開システムを開発し,短時間での災害現場空撮監視を目指しています.その他,防災GIS(地理情報システム)の普及啓発活動として新潟県庁でセミナーを開催したり,地域連携では,レゴのロボット・マインドストームを使った小中学生向け競技会を実施しています.
 「失敗を他人のせいにせず,成果に対し社会の評価を受ける」を研究室のモットーにしています.
可視光通信設備(協力:パナソニックグループ) 山古志支所前防災照明ネットワーク(協力:パナソニック電工) 空撮用ラジコンヘリコプター(協力:魚沼ラジコンクラブ)

 


スマートライフを目指して
─スマホアプリ使い勝手のユーザ実感可視化を一例として─

教授 山﨑 達也

キーワード: スマートライフ,ビッグデータ解析,IoE,QoE,顔画像,スマートアグリ(農業)

 情報通信技術(ICT: Information and Communications Technology)の発展により,大量のデータの取得や通信が比較的容易にできる時代になりました.しかしながら,使う人の目的や使用状況に応じてデータを処理して有用な情報へ変換しなければ,ICTの恩恵を十二分に受けることはできません.私たちの研究室では,利用者(ユーザ)の要求に応じて,データを取得し加工してユーザに提示したりシステム自体を制御したりすることにより,ユーザの生活自体をより便利にし,さらには安心安全なものとするための研究をしています.そして,その目的が達成された暮らしをスマートライフと呼んでいます.
 一例としてスマートファン(スマホ)の使い勝手の可視化の例を示します.スマホはご存知のように電波を使って情報のやり取りをしているので,電波環境の良し悪しに依存しています.通信事業者はサービスエリアマップ等の名称で場所毎の通信方式を公開していますが,これが実際のスマホの使い勝手と対応しているでしょうか?電波環境が良いように見えても多くのユーザが集中していたり,通信量が多いアプリを用いたりしているとユーザが感じる使い勝手は低下する可能性があります.俗にいう「サクサク感」が下がるかもしれないのです.このようなユーザ視点でサービスを判断することが近年求められており,この場合のサービスの品質はユーザ体感品質(QoE: Quality of Experience)と呼ばれています.私たちは新潟や首都圏,その他の地域においてユーザが実生活の中でスマホを使用した際のQoEを1から100の数値で評価してもらい,それを地図上に可視化する手法を開発しました.図に示すのが実際に取得されたQoEのデータを地図上に示した「QoEマップ」です.これより実体感におけるサービス品質が,地域毎もしくはアプリ毎で明確に違うことがわかってきました.今後はQoEの観点で差がない通信サービス,すなわち公平なQoEを実現するための通信システムの提案へ結び付けていきたいと考えています.
 このように,実世界から大量のデータを取得し目的に応じて加工することで,見えなかったものを見えるようにしたり,実世界をコントロールするためのパラメータ(変数)を見つけ出したり,原因と結果を説明するための因果関係モデルを構築するという研究をしています.関係するキーワードにはビッグデータ解析やIoE (Internet of Everything)が挙げられ,実際の応用として上述のQoE分析の他に,洋ナシの環境計測や顔画像解析による印象分析を行っています.

 


バイオインフォマティクス(生命情報学)研究室
―情報学的アプローチによるゲノム資源の活用―

准教授 阿部 貴志

キーワード: バイオインフォマティクス,データマイニング,比較ゲノム,メタゲノム,一括学習型自己組織化マップ

 バイオインフォマティクス(生命情報科学)とは,生命科学と情報科学が融合した新しい学問分野であり,遺伝情報を始めとする生物が持つ様々な情報から情報学的手法を駆使して,生物の謎を明らかにすることを目的としています.ゲノムは生命の設計図でありシナリオとも言えます.ヒトをはじめ広範囲の生物のゲノム配列が決定されています.ヒトのDNAのA(アデニン)・T(チミン)・G(グアニン)・C(シトシン)塩基を新聞の紙面に印字するとしたら,朝刊の25年分(30億文字)の分量にも達します.また,現在公開されている生物のゲノムでは,朝刊の1000年分を遥かに超え,正に大量な情報であり,コンピュータによる情報処理が必要不可欠となっています.
 現在,微生物からヒトまであらゆる生物のゲノム配列が解読されていますが,環境微生物の99%が難培養性で実験的研究が困難であるため,10億件超のメタゲノム配列解読結果が,生物系統情報・機能情報不明のまま公開されている状況です.産業的・医学的に有用な新規遺伝子が含まれている可能性があり,まさに未開拓のゲノム資源と言えます.
 当研究室では,この膨大な未開拓ゲノム資源からの効率的な知識発見を目的に,様々な情報工学的手法を開発しています.そして,開発した手法を用いて多くの実験研究グループと共同研究を実施し,新規有用遺伝子の探索や,環境変動に対する生物適応と進化プロセスの解明などに取り組んでいます.
 より詳細な研究紹介を研究室HP(http://bioinfo.ie.niigata-u.ac.jp)にて公開中ですのでご覧ください.

バイオインフォマティクスの概要図
情報ネットワーク
中野敬介,柄沢直之
情報ネットワーク中野敬介,柄沢直之

 


新しいネットワーク問題の研究

教授 中野 敬介

 筆者はネットワーク構造をもつシステムに興味を持ち,その設計,制御,最適化に関する研究を行ってきた.現在はインフォメーションフローティング(Information Floating)と呼ばれる新しい移動情報ネットワーク技術や電気自動車の「ながら充電」ネットワークの研究を主に行っている.
 移動通信ネットワークの設計・制御には,従来のネットワークにはなかった様々な観点が必要とされる.セルラ移動通信が始まり,設計理論に端末が移動するという観点が必要となった.その後,マルチホップ無線通信,エピデミック無線通信,インフォメーションフローティング(図参照のこと)のような端末間直接通信,端末による中継,端末による情報運搬を利用したネットワークが開発され,ネットワークの形が移動により変わるという観点が必要になった.筆者は,これらの観点を考慮した移動ネットワークの基礎研究を行ってきた.更に,これらのネットワークにおいて利用者の行動変化を促す情報(広告情報,事故情報,非難情報等)を配信した場合,情報の中身により利用者の行動が変わり,その結果ネットワークの形も変わるという新たな観点が必要となっており,現在筆者はこれを考慮した上でのインフォメーションフローティングの設計,制御の研究に取り組んでいる.

 


UAVによるエピデミック情報共有に関する研究

助教 柄沢 直之

キーワード: 無人航空機(UAV),エピデミック通信,情報共有,災害時通信

 移動体同士の直接無線通信と情報をもつ移動体の移動が繰り返されることで,情報は空間的に拡散していきます.このような移動体の移動,情報伝達を繰り返すことで情報を宛先に届ける方法はエピデミック通信と呼ばれており,このような特徴からインフラを使わない災害時の避難所間の情報共有手段として検討されています.そのなかで,避難所等を行き来する移動体が非常に少ない状況を想定した場合に,避難所に物資を届ける物資運搬車両をエピデミック通信で情報を運搬する移動体として使うことが考えられています.また,災害時における無人航空機(Unmanned Aerial Vehicle: UAV)やロボットの利用が検討されており,前述のエピデミック通信における物資輸送車両の代わりにUAVを利用することが検討されています.
 現在,災害時の情報共有を考えるうえで,UAVを用いたエピデミック通信による避難所間の情報共有について検討しています.このシステムでは,UAVは各避難所に到着して情報を共有し,他の避難所に移動し情報を伝え,途中バッテリがなくなる前に充電可能な避難所で充電を行います.これらを繰り返して避難所間で情報を共有するときの情報共有の特性について,計算機シミュレーションによって評価しています.今後はUAVに情報共有のためのシステムを実装し,実証実験による評価を検討しています.
数理
永幡幸生,管野政明,高橋剛,酒匂宏樹,山本征法
数理永幡幸生,管野政明,高橋剛,酒匂宏樹,山本征法
  • 永幡幸生 教授
    確率過程のスケール極限 ─確率過程から決定論的な法則を導きだす─
  • 管野政明 准教授
    準備中
  • 高橋剛 准教授
    ガンマ線自動車走行サーベイシステムに関係する情報工学技術の開発
    射影超曲面のガロワ点と準ガロワ点
  • 酒匂宏樹 准教授
    作用素環論と距離空間の幾何学
  • 山本征法 准教授
    拡散現象を記述する偏微分方程式の解の性質

 


確率過程のスケール極限
─確率過程から決定論的な法則を導きだす─

教授 永幡 幸生

 ランダムな微視的系から時間ー空間に対して適切なスケール極限を取ることにより決定論的な巨視的な系を導きだすことができます.このような操作を流体力学極限と呼びます.統計物理学の一つの大目標は巨視的な物理現象をその構成要素である微視的な大規模相互作用系から導きだすことです.この表現の中には微視的,巨視的という時間ー空間に対して2つの異なったスケールがあります.この微視的な系から局所エルゴード性を利用して巨視的な系を導出します.この局所エルゴード性とは何でしょう?この2つの異なったスケールのうち巨視的な時間スケールにおいて非常に短い時間間隔を考えたとしても微視的な時間スケールで考えればそれは十分に長い時間間隔になります.したがって局所的にみればこの系は平衡状態に達していてエルゴード定理を適用する,すなわちある種の物理量の算術平均はアンサンブル平均と同じであると結論付ける,ことが可能であると思われます.このような性質を局所エルゴード性と呼びます.このような考え方をベースにして物理学モデルを中心にいろいろなモデルに対してスケール極限,またこのスケール極限に必要な諸性質の研究を行っています.一例としてランクを表すモデルとして確率的に先頭にジャンプする粒子達を考えます.(図では一番下にジャンプする)この図からも何か特徴的な曲線が表れていますが,時間ー空間に対してスケール極限を取ることである微分方程式を導きだすことができます.

 


 


ガンマ線自動車走行サーベイシステムに関係する情報工学技術の開発
射影超曲面のガロワ点と準ガロワ点

准教授 高橋 剛

キーワード: 数学の情報工学への応用,チーム毘沙門,福島第一原子力発電所の事故,geant4による放射線シミュレーション,地表セシウム沈着量の推定,代数幾何学,射影超曲面のガロワ点と準ガロワ点,代数多様体の自己同型群,代数曲線の弱ガロワ・ワイエルシュトラス点

ガンマ線自動車走行サーベイシステムに関係する情報工学技術の開発
 2011年3月11日東北地方太平洋沖地震とその後の津波により,福島第一原発において原発事故が発生しました.多量の放射性物質が放出されて,その影響は現在も深刻です.新潟大学では,アイソトープ総合センターを中心に「チーム毘沙門」が結成され,定期的に福島県内の放射線量率測定が行われてきました.特に,GPSと放射線測定器を連動させた装置BISHAMONとASURA1号が開発され,それらを自動車に搭載し福島県内の道路上の放射線量率を広範囲にかつ正確に測定するということがなされてきました.当研究室は2015年度よりチーム毘沙門に仲間入りしました.数理情報工学的な側面からチームの活動に貢献して,原発事故被災地の復興に寄与することを目標にしています.現在は,チーム毘沙門によって得られた道路上での測定データをもとに,道路外のセシウム沈着量を算出する方法について研究を行っています.
射影超曲面のガロワ点と準ガロワ点
 吉原久夫氏(新潟大学名誉教授)によって1996年に射影超曲面のガロワ点が定義されて,その研究は吉原氏を中心に着実に進んできました.ガロワ点の定義から20年が経ちましたが魅力的な問題がまだたくさん残されています.というより,新しい問題が続々と増えている状況です.未解決問題については吉原氏と深澤知氏(山形大学)によりまとめられ,吉原氏のウェブページにて公開されています( http://hyoshihara.web.fc2.com/ ).ガロワ点とガロワ・ワイエルシュトラス点の関係に注目した研究を現在行っています.
 近年,三浦敬氏(宇部高専)と深澤氏と高橋により,ガロワ点理論の拡張を目指した新しい研究対象である射影超曲面の準ガロワ点が定義されて,その研究が開始されました.準ガロワ点はガロワ点よりも多く存在していて,より多様な研究結果が期待されます.さらに,準ガロワ点研究で得られる成果は,射影超曲面の分類・射影超曲面の自己同型群・代数曲線の有理点といった研究への新展開に繋がり,開発される手法は射影代数多様体の繊細な性質を扱うための新手法となることが期待されます.現在,射影超曲面の準ガロワ点について,その個数と分布・付随する群・具体例の構成方法などを中心に研究を進めています.詳しくは preprint "Quasi-Galois Points" ( arXiv.org > math > arXiv 1505.00148, http://arxiv.org/abs/1505.00148 ) をご参照ください.
―準ガロワ点の定義―
 射影空間内の既約代数超曲面 X に対して,一点 P 中心の射影を π とする.自己同型群の部分群

G[P] := { σ ∈ Aut(C) | π ⚬ σ = π }

の位数が2以上となる時に,点 P は X に対する準ガロワ点であるという.G[P] の位数が射影 π の次数と等しい時は点 P はガロワ点であるという.射影 π から得られる自然な関数体の拡大のガロワ閉包を考えて,そのガロワ群を準ガロワ点 P に付随するガロワ群と呼ぶ.

 


作用素環論と距離空間の幾何学

准教授 酒匂 宏樹

キーワード: 関数解析学,作用素環論,フォンノイマン環,C*-環,従順性,離散群,距離空間の大規模構造,非可換確率論,直交多項式の漸近挙動

関数解析学,とくに作用素環論
 私は数学を研究しています.数学はその中に様々な分野がありますが,一つにつながっていて分けることができません.一つの分野に専念しているつもりでも,隣の分野の研究成果が得られてしまう,そんなことはよくあることです.
 私は大学院生のときから,関数解析学のそのまた一部である作用素環論を研究してきました.作用素環は物理学で扱う量を,どうしたら数学の言葉で書き表すことができるのか,その格闘の中で生まれました.学位論文では作用素環の構造に関わる研究についてまとめました.しかしその後,作用素環論が群の研究にも役立つことがわかったのです.
関数解析的な群論
 群は図形の対称性に関係する,数学者の研究対象です.群にはたくさんの種類があるのですが,それを分類すること,つまり似たものかどうかを判定することが大事です.また,与えられた群がどのような性質を満たすのかについて調べることも重要です.群が持っている性質は実は作用素環論と関係があります.私は特に,「従順性」という性質に着目して研究を行ってきました.
距離空間
 距離空間とは遠さや近さが定められているような,数学者の研究対象です.群が与えられると,距離空間を作ることができます.群だけでなく距離空間も作用素環を使って研究することができます.例えば,距離空間の連結性と作用素環の従順性にきれいな対応関係が成り立っていることがわかります.
非可換確率論
 顕微鏡で拡大しても見えないようなミクロの世界では,直感的に理解できないような現象がたくさん起きます.例えば粒子の位置と運動量が同時に決まった値をとらないという不確定性関係が成り立つことが知られています.また実験の方法をきっちりと一つに決めても,粒子の位置,粒子の運動量はそれぞれランダムな振舞いをします.このような複数の物理量を一気に扱うために非可換確率論の研究が進められています.わたしは,共同研究者の西郷甲矢人さんと量子古典対応についての研究を進めています.

 


拡散現象を記述する偏微分方程式の解の性質

准教授 山本 征法

キーワード: 解析学,非線形偏微分方程式,熱伝導方程式,拡散方程式,放物型方程式,数理物理,半導体素子のシミュレーションモデル,走化性モデル

 金属中の熱の伝導や溶液中の溶質の拡がりなど,自然界には多くの拡散現象が見られます.これらの現象は,熱伝導方程式あるいは拡散方程式と呼ばれる偏微分方程式の解を用いて記述することが出来ます.例えば,熱は暖かいところからより冷たい方へ流れ,やがて全体の温度が一様になることは経験から明らかですが,拡散方程式の解はこうした現象を忠実に再現します.一方,熱伝導や溶質の拡がりとは無関係に見える多くの現象,例えば半導体素子内部の電荷の振る舞い,微生物が環境中に進出する様子,水の流れ,インフルエンザの流行や,捕食者と被食者の攻防なども,拡散方程式に適切な外力を盛り込んだ非線形方程式の解によって近似的に記述できると考えられています.こうした非線形方程式はシミュレーションモデルを構築・検証する際の基礎となるものですが,高校で習う代数方程式や大学で学ぶ初等的な常微分方程式とは異なり,その解を具体的に書くことが出来ません.そこで,解の大まかな形状や基本的な性質を調べる必要が生じます.この研究室では,解の性質が初期データにどの程度依存するか,また,解の形状が時間とともにどのように変化するかについて研究しています.

pチャネルMOSトランジスタの模式図
ゲート付近に集まった電荷の振る舞いは拡散現象の一例である.
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